ギターの弦高の一般的数値とその理由

弦高が低ければ、押さえるのは楽になるんだけど…

ギターと指を繋ぐ、弦の感覚を大きく左右する弦のセッティング

良くいただくご相談の中に、『弦高のセッティングが分からない』というものがあります。弦高(げんこう)については僕も長いギターライフの中で幾度となく悩んだ問題でした。今している練習が身を結ぶのかどうかに直結する問題だからです。

弦高というのは、フレットと弦の離れている距離のことです。ギターの中心である12フレット上で計測され、一般的にスケール(定規)で測られます。

主にブリッジサドルの上げ下げで調整可能ですが、ネックコンディションなどにも影響を受けて変動します。

今回はエレキギター、アコースティックギターとも弦高の一般的な数値と、なぜその数値なのかの理由についてご案内したいと思います。

エレキギターの弦高の一般的な数値

機種によって若干の差はありますが、エレキギターの一般的な数値は6弦の12フレット上で2.0mm、1弦の12フレット上で1.5mmです(指板のRがヴィンテージ系の7.25インチのものは、1弦側が+0.2〜0.3mmほど高め)。

弦はプレイヤーにピッキングされてから振動を開始しますが、決して指板面と並行方向に振動するのではなく、3次元の弧を描いて振動します。1弦の方が6弦より低いのは弦が細いため振動幅が狭いためです。

もっと低い方が弾きやすい、と思われがちですが、これ以上下げてしまうと弦が、フレットに弦振動初期から接触し、フレットバズと言われるフレットとの接触ノイズが出るようになります。

また、弾いていない弦のミュートがうまく出来ずに雑音だらけのプレイになってしまい、サウンド面でも粘りのない細い音になります。初心者から中級者に至るまで、弦高を下げがちですが、上記の数値より±0.2〜0.3mmほどで留める方が良いでしょう。

また、これ以上高い場合ではピッチ(音程)がシャープしてしまったり、サウンド面でもボーンと抜けないサウンドになりがちです。

出荷時のギターは概ねこの数値、6弦の12フレット上で2.0mm、1弦の12フレット上で1.5mmに近い数値でセッティングされており、ここから大きく逸脱する数値の場合はネックコンディションに反りなどの問題があるかもしれません。

弦高とサウンドの相関関係として、高くなれば音が太めに、低くなれば音が繊細になる傾向があります。狙ったサウンドによって調整を行う事で、よりプレイスタイルに合ったサウンドとプレイアビリティを目指すことが出来ます。

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テクニカルなプレイヤーは弦高も低いのか

自分の練習している楽曲はテクニカルなもので、上記の弦高ではプロのギタリストもプレイしていないだろう、というご意見もいただいたことがあるのですが、実際プロギタリストのステージセッティングのギターを触らせていただいてもほぼ一般的な数値と変わりませんでした。

深いディストーションをかけてリードを弾く、ハードロック系のギタリストにも詳しく話を聞いてみたことがあるのですが、『弦高は低い方が押さえやすいが、やはり演奏時のミュートが難しくなるためあまり下げない』とのこと。

彼らの卓越したプレイは、弾きやすいギターのおかげではなく、たゆまぬ練習の成果なのですね。

弦高をあまり気にせずプレイしているギタリストも多く、コンディションの良くない非常に高い弦高で慣れてしまったからそのまま使っている、というプレイヤーも歴史上多く存在します。これもまたギターという楽器の面白いところでしょう。

低い弦高の維持のためには

もちろんかなりのローアクションでプレイしているアーティストもいますので、出したいサウンドやプレイから最適な弦高を導き出す必要があります。

一般的な数値を大きく下回る様なローアクションのセッティングは、微妙な環境の変化で変わるギターのコンディションをしっかり見極めて、プレイヤー自らしっかり調整を行えれば維持も可能です。

アコースティックギターの一般的な弦高

トップ板の通年での変化もあり細かい調整は難しい

アコースティックギターの弦高は、一般的には6弦は12フレット上で3.0mmから2.5mm、1弦は12フレット上で2.0mmから2.5mmです。

なぜ0.5mmも開きがあるのかというと、アコースティックギターのトップ板は通年で0.数mm膨らんだりへこんだりを繰り返します。ですので、0.何mmといった調整はほぼ不可能です

どうしても弾きづらい場合は、弦のゲージを細くするか、サドルを削っての弦高調整をするにしても少しずつにするのが良いでしょう。

サドルを削り過ぎてしまった場合には、ブリッジサドルの下に『シム』と呼ばれる薄い底上げの板を挟む事で微調整することもあります。

削り過ぎてしまった時以外にも、通年でのコンディションの変化に対応する場合にも使用されます。トップ板のコンディションを見ながら、シムで弦高調整するとコンマミリ単位の弦高調整と維持が可能になります。

弦高はギターコンディションのバロメーター

以上の理由からギター製作時や出荷時の弦高セッティングは概ね上記の数値で行われています。ブリッジサドルの高さはこの数値に基づいて調整されており、著しく弦高が異なる場合はネックの反りやその他の不具合が考えられますので、トラスロッドにて調整を行うか、購入店またはリペアショップへ相談してみましょう。

いかがでしたでしょうか。ギターの弦高に関しては色々な意見がありますが、基準となる数値とその理由をご案内させていただきました。

しっかり基準を認識することで、『みんなこの条件で弾いているんだ』と練習においても確信を持って取り組むことが出来ますよね。ギターのセッティングに関してはお好みもありますが、物理的には上記の数値が理想とも言えます。

最後に、通常のスケールに不慣れでも弦高測定しやすいスケールをご紹介いたします。それぞれの数値ごとにめもりが設けられていて非常に使いやすいものです。みなさんのギターライフがより良いものになりましたら幸いです。

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