【Jazz Guitar】Have Yourself a Soulful Little Christmas / Kenny Burrell (1966)

ブルー・ジャズジャイアントが贈るクールなクリスマスソング。

ストリングス & ホーンと奏でるゴージャスなクリスマス

クリスマスは年間行事のなかでも最も盛り上がる行事のひとつ。一気に寒くなり、大晦日へ向けて忙しなく動く街やイルミネーションが年の終わりを感じさせる年の瀬ですが、クリスマスは誰もが家族や友人、誰かのためのことを考えたりして、街は優しい雰囲気に包まれます。

今回ご紹介するのは、ブルーでクールながらどこか優しさを感じさせてくれるジャズギターを、豪華なストリングス & ホーンアレンジと共に聴くことが出来る、タイトル通りソウルフルな仕上がりのクリスマスアルバムの名盤『Have Yourself a Soulful Little Christmas / Kenny Burrell (1966)』です。

ブルースフィーリングを持ったモダンジャズギターの巨人

1951年ディジー・ガレスピー楽団に入りプロデビューしたケニーバレル。1955年にニューヨークで活動を始め、ブルーノートのプロデューサーであるアルフレッド・ライオンの目にとまります。レーベルのアーティストに必ずブルースの曲を入れるように指示するほどブルース好きのライオンはケニーバレルを気に入り、1956年3月にリーダー作をレコーディング。弾くノート全てがスウィングする様な独特のブルースフィーリングを持ったプレイで活躍しました。

1963年リリースの名盤『Midnight Blue』ではシンプルなバンド編成でブルーを表現したケニーバレルですが、本作はストリングスやホーンセクションによるオーケストレーションで非常にゴージャスなアレンジが施されています。

しかしながら、1番な魅力はどんなアンサンブルにあってもクールにスウィングし、ブルーなフィーリングに染め上げるケニーバレルの真骨頂が感じられる事ではないでしょうか。

伝統的なクリスマスキャロルから、ポップソングとして親しまれているものまで、幅広い選曲でクリスマスの雰囲気を存分に楽しめる本作。気に入っていただければ幸いです。

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Have Yourself a Soulful Little Christmas / Kenny Burrell (1966)収録曲解説

The Little Drummer Boy

キャサリン・ケニコット・デーヴィスが1941年に作曲・発表したクリスマスソングで、多くのミュージシャンにカバーされる定番曲。1955年に映画『サウンドオブミュージック』のモデルとなったトラップ家族合唱団が、1958年にはハリー・シメオン・コラールがそれぞれカバーしている。

本作ではラヴェルの『ボレロ』のオマージュ的アプローチ。産まれたばかりのイエスを微笑ませたと言われるドラムの音を現した「パ・ラパパンパン」のメロディを抑制の効いたトーンで奏でながらスタートし、ホーンが入りバックが盛り上がると徐々にギターも熱を帯びてくる。このアルバムが、従来のクリスマスアルバムとは違うものだとオープニングから知らしめてくれる、遊び心溢れる名演。

Have Yourself a Merry Little Christmas

1943年ヒュー・マーティン、ラルフ・ブレイン作曲。1944年公開のミュージカル映画『若草の頃(Meet Me in St. Louis)』でジュディ・ガーランドによって歌われ、フランク・シナトラのテイクでも人気を博したクリスマスの定番曲。

本作では、ロマンチックなストリングスをバックにおごそかながら、しっとりとした優しい音色のギターで楽しむことが出来る。

My Favorite Things

リチャード・ロジャース作曲、オスカー・ハマースタイン2世作詞。1959年ブロードウェイミュージカル『サウンドオブミュージック』のために書かれた曲で、1965年にジュリーアンドリュース主演で映画化され大ヒットした。様々なアーティストにプレイされているジャズスタンダードとしても有名。

歌の中に冬を想起させる『ウールのミトン』や、『ドアのベル、ソリのベル』などが出て来るからか、クリスマスソングの定番として歌われる。

本作ではホーンとケニーバレルのインプロヴィゼーションが冴え渡るアレンジで、ドライブ感溢れる仕上がりになっている。

Away in a Manger

19世紀末ごろに書かれた聖歌(クリスマスキャロル)で、『Cradle Song』ウィリアムカークパトリック版(1895)『Mueller』ジェームズマーレー版(1887)がある。キリスト降誕の際、宿屋が混んでいたためにイエスを飼い葉桶(Manger)に寝かせたとされている、ルカ福音書の記述に寄る歌。

聖歌として、非常に多くのアーティストに取り上げられており、本作でも古くから歌われている聖歌への敬意を持って厳かに演奏されている。

Mary’s Little Boy Chile

1956年ジェスターヘアーストン作曲の『Mary’s Boy Child』。同年ゴスペルシンガーのマヘリヤジャクソンがリリースするにあたって『Mary’s Little Boy Chile』となった。キリストの降誕を祝福するクリスマスキャロル。

本作ではカリプソ調に書かれたイメージを基にチャーミングなアレンジが施されている。

White Christmas

アーヴィングバーリン作詞作曲。作曲年に関して作曲者本人も正確には覚えていなかった様だが、1940年ごろだと言われる。ビングクロスビーのヒットでポピュラーになった、クリスマスの情景を歌った最も良く知られるクリスマスソングのひとつ。

本作ではピアノカルテットのスローバラードで演奏され、ジャズらしいシンプルな仕上がりになっている。

God Rest Ye Merry, Gentlemen

16世紀にはすでに歌われていたとされる最古のクリスマスキャロルのひとつ。ルカ福音書の記述に寄る。マイナー調のキリストの降誕を祝福する曲だが、本作ではストリングスをフィーチャーしたマイナーブルースで演奏される。

The Christmas Song

1944年作曲家、歌手のメルトーメとボブウェルズの作曲。ナットキングコールのテイクでポピュラーになり、現在最も歌われるクリスマスソングのひとつ。『1歳の子供から、92歳のお年寄りまで、簡単な言葉を贈ろう。メリークリスマス。』とナットキングコールが優しく歌う名曲で、本作でも語りかける様な優しいギターを聴くことが出来る。

Children Go Where I Send Thee

トラディショナルな黒人霊歌のひとつで、『The Holy Baby』『Born in Bethlehem』などのタイトルでも知られ、たくさんのバージョンがあり数え歌としても親しまれているクリスマスキャロル。

本作ではオルガンの軽快なバッキングと共にゴスペルの雰囲気のあるアレンジになっており、思わず踊り出しそうな楽しい仕上がりになっている。

Silent Night

日本でもよく歌われる『きよしこの夜』。オリジナルはドイツ語で、初演は1818年とトラディショナルなクリスマスキャロル。ヨゼフ・モール作詞、フランツ・クサーヴァー・グルーバー作曲。本作ではストリングスと、ゴスペル調のピアノでアレンジされ、ブルースフィーリング溢れる仕上がりになっている。

The Twelve Days of Christmas

クリスマスから公現祭までの12日を数える数え歌として親しまれて来た伝統的な民謡で、1780年にイギリスで歌詞が作られて、現在のメロディーは1909年のフレデリック・オースチン作。

Merry Christmas Baby

1947年ルーボクスターとジョニームーアの作。R&Bのクリスマスソングのスタンダードで、チャックベリーやオーティスレディング、BBキングなど多くのブルース、ロックアーティストにもカバーされている。本作のエンディングを締めくくるにふさわしい、ブルースフィーリング溢れるケニーバレルのギターを存分に楽しめる仕上がりになっている。

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