ギターに音詰まりが出た時のセルフチェックと調整方法

音詰まりの原因はパーツの摩耗かネックコンディションの変化

ギターに音詰まりが出た時のセルフチェック手順

夢中で練習していると、ある時ふと音詰まりが…いつも平気だったのに、大切に弾いて来たのに、壊れちゃったのかな…と不安になりますよね。

でもご安心下さい。殆どの場合、適切なチェックと対応で解消することが出来ます。解消出来なくてもセルフチェック出来れば、リペアショップへ持ち込む際に、リペアマンとの話もしやすく安心です。

今回は、音詰まりが出た時のセルフチェック手順と、セルフで出来る応急処置などの対応方法をご案内します。

診断の準備として、12フレット上で弦高を測ってみましょう。エレキギターの場合、6弦で2.0mm、1弦で1.5mmを目安に、±0.2mmほどになっていますでしょうか。低過ぎる弦高の場合は適正にすることで解消することもあります。

弦高についての詳しい解説は、こちらをご覧ください。

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ギターの弦高は
 
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準備完了しましたか?それでは見ていきましょう!

音 詰まりが起きる箇所を特定しよう

まず大まかにハイポジション(高音側)ローポジション(低音側)か、それとも開放弦なのかをチェックします。

更に、固まったエリアなのか、特定のフレットだけの症状なのか、フレットをひとつずつ弾いてみてチェックしていきます。いかがでしょうか、症状の分析は出来ましたか?それでは、それぞれの症状について、原因と対策をご案内していきます

音詰まりの部位をおおまかにチェックし、特定のフレットなのかエリアなのか分析してみよう

 

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開放弦での音詰まりの原因と対策

開放弦全弦での音詰まりはネックの順反りが原因

開放弦で音詰まりが出た場合、全ての弦で音詰まりがある場合はネックが逆反り(トラスロッドが引っ張る方向に曲がっている)状態です。この場合はまずトラスロッドでネックを調整する必要があります。ネックコンディションを適正に調整しましょう。

トラスロッド調整についてはこちらをご覧ください。

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それでもまだ音詰まりが出る場合はナットの摩耗が原因です。

ナットの摩耗のチェック方法

ナット高の適正チェックは、このように3フレットを押さえ、1フレットと弦の間にクリアランスがあるかどうかで判断します。アコギ、エレキで設定は違いますが、僅かに隙間が有れば問題ない状態です。全く隙間がなく、フレットにぴったり弦がくっついてしまっている状態はナットがすり減ってしまっている状態です。

少しネックを順反りに調整して対処する方法が在りますが、後々のネックコンディションへの悪影響も考えられますので、ナットがすり減ってしまった場合の対応は基本的にナット交換になります。

開放弦の特定の弦だけの音詰まり

特定の弦だけの音詰まりに関しては、ほぼナットの摩耗が原因です。上記のチェック方法で確認してみましょう。

弦一本だけの音詰まりの場合、応急処置として瞬間接着剤をナット溝につけて埋め、溝を切り直す方法も良く取られます。

瞬間接着剤を爪楊枝など先の細いモノに少しだけ付けて溝に塗り込んだあと、硬化を待ってナットファイルなどで整形します。プロの現場などでも応急処置として用いられている方法ですが、木部に接着剤がつかないようにして下さい。加えて溝を削り過ぎない様に慎重に作業しましょう。

 

 

ハイポジション全体での音詰まりの原因と対策

ネックの順反りが主な原因

ハイポジション全体に音詰まりがある場合、ネックの順反りが原因です。

ネックが弦に引っ張られる方向に曲がることで、ブリッジへの侵入角度が変わり、押さえているフレットより高音側のフレットに弦が当たって出る症状です。

 

この場合は、トラスロッドでのネック調整をするのが理想的ではありますが、僅かな反りであれば少し弦高を上げてみることで解消されます。音詰まりが解消出来た弦高が高過ぎる場合、もしくは弾きにくい場合はトラスロッドでの調整にトライしてみましょう。

ハイポジションの特定のフレットでの音詰まり

ハイポジションの特定のフレットだけ音詰まりが起こる場合は、フレットの摩耗か、症状が出るフレットより高音側のフレットの浮きが原因です。

いつも弾くところは摩耗していく

ソロプレイを頑張って練習していると、いつも特定のフレットでチョーキングをしたり、ビブラートをかけていたりしていませんか?

プレイするエリアが偏ると、その部分だけ摩耗が進み、他のフレットよりも高さが低くなります。そのため、高音側のフレットの頭に弦が触れてしまい、音詰まりが起こります。

この場合は、すり減ったフレットに合わせて全体を削る、フレットレベリング(すり合わせ)を行います。この作業は多少経験を必要としますが、セルフで出来るキットも販売されています。

 

 

摩耗がひどくなければ、わずかに弦高を上げてみると解消しますので、応急処置として行ってみてもいいでしょう。

フレットの浮きは木材の収縮で起こる

症状の出るフレットに摩耗が見られない場合は、高音側フレットの浮きが原因です。

フレットは指板に返しのついた足を打ち込むことで固定されています。乾燥が原因で木材の収縮が起こると、その固定が緩みフレットが浮いて来ます。フレットと指板の間に、他のフレットに比べて隙間があるフレットはありませんか?あればそのフレットが原因です。

フレット浮きはどこのポジションでも起こる症状ですが、経験上ハイポジションに起こることが多い印象です。

対応としては、木槌ラバーハンマーなどで慎重に叩いて打ち込み直すと元に戻ることもあります。

しかし経験が必要な荒療治ですので、弦高を少し上げてみるのがやはり安全で有効です。きっちりに直すには、やはりフレットレベリング(すり合わせ)になります。

フレット浮きの防止策としては、保管環境の湿度に気をつける、弦交換時などに少量のオレンジオイルなどを塗布し、指板面の保湿を定期的に行うと良いでしょう。弦交換についての記事で指板のケアにも触れていますのでご覧ください。

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ローポジションでの音詰まりの原因と対策

ローポジションでの音詰まりは、ネックの逆反りか、フレットの摩耗がほとんどです。ネックコンディションを確認し、逆反りになっている様なら、まずネックをストレートにしましょう。

ローフレットの摩耗は、ローポジションでのコードストロークでプレイする方に多く見られ、弦の下に弦振動で削られた溝が出来ている事が原因です。ローポジションでのコードストロークは、通常より強めのアタックになることが多く、弦自体も大きく振動するため、フレットの摩耗が起きやすい部位でもあります。

対応としては、弦高を上げるか、フレットレベリング(すり合わせ)となります。弦の当たる場所をチェックし、深い溝が出来ているならフレットレベリング(すり合わせ)が1番良いと思います。

この症状は少し順反り気味にすることで緩和されることがありますが、あくまで応急処置として留めておいて下さい。ローポジションに限らず、フレットの摩耗は錆びた弦で弾くことで急速に悪化しますので、なるべく弦は定期的に新しいものに替えましょう。

頑張りを受け止めてくれた証

いかがでしたでしょうか。この他にもネックのねじれや波打ちなど、様々な原因がありますが、音詰まりの症状は、ほぼナットやフレットなどの摩耗で起こります。ナットやフレットは消耗パーツであり、あなたが一生懸命ギターを練習した証でもあるのです。

フレットやナットは調整、交換可能なものですので、あなたの頑張りを精一杯受け止めてくれたギターを、出来ればプロの手に委ねてきっちりリペアして下さい。

それぞれの簡単な加工に関しても、慎重に行えば時間もコストも節約出来ますので、ご興味を持たれた方はトライしてみるのも良いでしょう。

ギターの様々な数値を計測するのに便利なスケールも販売されています。日頃から数値で自分のギターを把握する事で、快適なコンディションを維持する目安となります。ひとつ持っておくと良いでしょう。

出会った頃の輝きが、あなたの愛器に戻るきっかけになれば幸いです。

 

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