【Rock】Hunky Dory / David Bowie (1971)

『世界を売った男』の見た新しい世界。

トランスフォームを続ける異形の天才の内宇宙

アポロ11号の月面着陸で、全世界の目が宇宙へ憧れをもって向けられていた1969年。

『Space Oddity (1969)』のヒットで一躍スターダムに躍り出たデビッドボウイ。『トム少佐』と言うキャラクターを演じる事でのパフォーマンスの手応えを感じていた彼は次のアイコンとなるキャラクターの模索を始めます。

『The Man Who Sold the World (1970)』と本作『Hunky Dory(1971)』はこの後に産まれるモンスター、 Ziggy Stardust に連なる作品で、ボウイ自身の内省的な世界観を陰と陽の様に描いた重要なアルバムです。

『Hunky Dory』とは当時のロンドンの労働者階級(コクニー)の用いるスラングで『素晴らしい』などの意味の言葉で、前作にて自身の過去と訣別したボウイの新しい挑戦への希望と情熱を感じる楽曲群と共に新しい世界観が提示されています。

ピアノとストリングスで描くボウイの内宇宙

前作でのエンジニア、ケン・スコットをプロデューサーに迎え、バンドサウンドを抑えピアノとホーン&ストリングスアレンジが大々的にフィーチャーされている今作。

ケン・スコットはアビーロードスタジオのエンジニアで、初期からボウイの作品に携わっており、ピアノを軸にストリングスやホーンをバンドサウンドにうまくフィットさせるアレンジで内省的な今作の美しさをより引き立てています。

『Changes』での変化していく事への決意表明から、『Quicksand』での静かな葛藤、息子の誕生を喜び作曲された『Oh! You Pretty Things』そして『The Bewlay Brothers』での精神疾患を抱える兄への思いなど、ボウイの抱える様々な感情が美しいサウンドと共に昇華されています。

アンディ・ウォーホルルー・リードなどと出会ったのもこの頃で、ボウイの世界が一気に広がっていく様が感じられます。

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キーボーディスト、リック・ウェイクマン

前回に引き続き、バンドメンバーはギターにミック・ロンソン、ベースにトレバー・ボールダー、ドラムスにミック・ウッドマンジー。

ボウイ自身はサックス、トレバー・ボールダーはトランペットもこなし、サウンドをバンドサウンドを超えた仕上がりにしています。

そのアレンジの軸になっているのが、キーボーディスト、リック・ウェイクマンです。プログレッシブ・ロックバンドの『Yes』のキーボーディストで知られる彼は、『Space Oddity(1969)』のレコーディングにも参加しており、数々のセッションやライブをボウイと共演しており、今作の独特の世界観を見事に表現。今ではイギリスを代表するキーボーディストとなっています。

心象風景の素描たる連作を越えて

前作『The Man Who Sold the World (1970)』のヒリヒリする様な感覚から一転、美しいサウンドに仕上がった本作。新しい出会いや喜びを感じながら徐々に自分自身の内的宇宙を昇華していったボウイは、いよいよ Ziggy Stardust へと変貌していきます。ボウイのキャリアのなかで長く演奏されていた楽曲も多く、聴きごたえのある本作、気に入っていただけましたら幸いです。

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