【Jazz】No Restrictions / Iris Ornig (2012)

女性ベーシストリーダーの情緒溢れる秋色のサウンド

時がゆっくりと流れる秋の昼下がりの様なサウンド

繊細なソングライティングが光る名作

秋という季節は自然が大きく冬に向けて移ろい、過ぎ去っていくはかない美しさがあります。それでも秋晴れの昼下がりに窓から差し込む暖かい光と色づいた街路樹を目にすると、ふと時間の流れが優しく感じられたりするもの。

そんな秋の昼下がりに優しいサウンドに包まれて過ごしたい。そんな至福の時間を叶えてくれる名盤『No Restrictions / Iris Ornig (2012)』をご紹介します。

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NYジャズシーンの精鋭が集結した珠玉の名演

楽曲を丁寧に、のびやかにプレイするバンドサウンドの心地良さ

No Restrictions(制約なし)』のタイトル通り、それぞれのプレイヤーがのびのびと楽曲を表現しながらも、しっかり楽曲としてまとまっている本作。

本作のために集まったメンバーは、世界のジャズをリードし続けているニューヨークコンテンポラリージャズシーンの最精鋭のプレイヤーたち。そんな精鋭揃いのメンツだからこそ、のクオリティで、繊細な美しさの楽曲を思う存分引き立てています。それでは本作参加の豪華なメンツを見ていきましょう。

Iris Ornig (Leader, Bass)

リーダーはベーシストで作曲家のアイリスオーニグ。ニューヨークのジャズシーンで活躍している彼女。2003年にドイツからニューヨークに拠点を移した後に、多くの影響力のあるコンテンポラリージャズミュージシャンたちと共演しています。

彼女の曲は非常に繊細かつフックに富んでいて一度聴くと口ずさめる親しみやすさがありながらも、コンテンポラリージャズのモダンさも持ち合わせていて聴き応えがあります。本作『No Restrictions (2012)』は、アイリスの2作目のリーダー作です。

Michael Rodrigues (Trumpet)

トランペットにはマンハッタンジャズクインテットなどで活躍しているマイケルロドリゲス。繊細さと力強さを兼ね備えた表現力豊かなプレイに定評があり、本作でもその魅力を存分に楽しめます。

Kurt Rosenwinkel (Guitar)

ギターには現代のジャズの帝王と呼ばれるカートローゼンウィンケル。変幻自在のプレイが魅力のカートのギターですが、本作では浮遊感あるトーンで楽曲に深みを創り出しながらも、疾走感溢れるリードプレイも存分に聴くことが出来ます。

カートとマイクのソロプレイの絡みは非常に心地良く、本作の魅力のひとつでもあります。

Helen Sung (Piano)

ピアノには、詩情豊かなプレイが魅力のピアニストで作曲家のヘレンスン。クラシックピアノ出身の彼女は、20代前半からジャズの世界に興味を持ち現在はニューヨークを拠点に様々なアーティストと共演、国際的に活躍しています。本作の繊細な美しさを印象付けるリリカルなプレイも本作の聴きどころです。

Marcus Guilmore (Drums)

ドラムには現代ジャズシーンで最も注目されているドラマーのひとり、マーカスギルモア。チャーリーパーカーバンドで活躍したロイ・ヘインズは祖父にあたります。10歳でドラムを始め、16歳ではプロとして活動を開始。ピアニストのチック・コリアなど、多くのコンテンポラリージャズのアーティストと共演しています。チック・コリアとの作品ではラテン・グラミー賞などの賞を受賞しています。本作でも全編に渡ってバンドサウンドに奥行きを作ってくれています。

詩情溢れる楽曲と名手たちの競演に酔う午後を。

ヘレンスンのピアノと、カートローゼンウィンケルのギターとのコンビネーションによるオープニングから、マイクロドリゲスの端正なトランペットの印象的なメインテーマから始まる『Autumn Kiss』。

さすがコンテンポラリージャズシーンの精鋭たちの競演。楽曲の詩情を素晴らしいトーンとプレイで知らぬ間に世界に引き込まれていきます。

そしてロマンチックな楽曲『We Shall Meet Beyond The River』。スローバラードであるこの曲は、バンドとそれぞれのプレイの表現力、ダイナミクスが堪能出来ます。どこかストーリーを感じるこの曲。切なさと深い愛を感じるサウンドで、本作でもひときわ美しい曲です。

タイトルチューン『No Restrictions』ではそれぞれ思い切り楽曲を楽しむ姿が浮かぶ様な、のびのびとしたプレイがとても印象的です。オモチャ箱をひっくり返した様なキュートさと無邪気さが心地よい楽曲です。

その他ビョークの楽曲『Venus as a boy』やマイケルジャクソンの『The Way You Make Me Feel』なども大胆にアレンジされ聴きどころのひとつになっています。

2012年と比較的新しい録音でもあり、現在も第一線で活躍している彼らの描く、詩情溢れる名演。秋になるとふと聴きたくなる一枚です。是非あなたも秋晴れの日に、コーヒーに混ぜてゆっくりお召し上がり下さい。気に入っていただければ幸いです。

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iris ornig no restrictions Art Work
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