【Jazz Trumpet】Kind of Blue / Miles Davis (1959)

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何となく、ちょっとだけブルーに染まりたい夜に。

静寂というキャンバスに描かれたブルー。

ハードバップを経てたどり着いたモードの世界

ブルー、とはジャズでよく用いられる言葉で、それはジャズの成り立ちがブルースに基づいているから。日々の憂鬱を歌う事で浄化していたブルース。ブルースもジャズも、文字通り人生を彩る様々な『Blues(ブルーたち)』を表現する芸術で、その他の要素は音楽分類上の便宜に過ぎないのだと思います。

そんな『Blues』を追い求め、ビバップからクールジャズと自ら名付けたジャズの再定義、ハードバップを経て、それでもより自由にブルーを描く事を追い求めたマイルスデイビス。今回はマイルスデイビスの代表作のひとつである、モードジャズの名盤『Kind of Blue』をご紹介します。

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『お約束のソロ回しなんか飽き飽きだ』変わり続ける、という美学

アメリカのトランペッターであるマイルスデイビス(1926年5月26日 – 1991年9月28日)はジャズの歴史において最も重要な人物のひとりです。裕福な歯科医の父と音楽教師の母の間に生まれ、13歳でトランペットを手にした彼は、その後しばらくしてジャズクラブに出演する様になり、ビバップの帝王チャーリーパーカーに出会います。チャーリーパーカーのバンドで実力をつけたマイルスは、ジャズシーンの重要人物へと成長し、ビバップからクールジャズ、ハードバップと次々とジャズシーンを牽引していきました。

ハードバップのマンネリ化

ビバップからハードバップへの変革は、より豊かな楽曲表現をもたらしましたが、どんな形態でもマンネリ化は止められないものです。短期間にアルバム4枚を収録した世にいう『マラソンセッション』などを経たマイルスは『単なるソロ回しに飽き飽きしていた』と後に語る通り、ハードバップのマンネリ化を打破するべく新たな表現を模索し始めます。

Milestonesというマイルストーン

『Kind of Blue』に至る前に、この『Milestones』でマイルスはモードジャズという新しい手法に取り組みます。従来のコード進行を追う和音ベースのプレイではなく、より創造的にメロディをプレイする手法のこの『モードジャズ』は、シンプルで調性のあいまいなコードの上で、特定のスケール(音階)を基にメロディを作り上げていくコンセプトで作られて行きます。

とてもキャッチーなフックで始まるこの曲ですが、いわゆるスタンダード曲の様な起承転結はなく、どこまでも続いていく様な、まさに道標をいくつも見送る軽快な旅の様な名曲です。このレコーディングで手応えを得たマイルスは、この新しく手に入れた手法を推し進めていきます。

色彩空間を作り上げるアンサンブル

『卵の殻の上を歩く様なトーン』と評されていたハーマン・ミュートを用いた繊細なミュートトランペットのサウンドで、音色への深いこだわりを見せていたマイルス。ここまでの彼の作品を通して感じるのは、サウンドによって空間を作り上げていく様な美学です。

そんな彼の美学がモードジャズの手法と合わさって、アンサンブル全体で静寂というキャンバスに様々な『Blue』を描いていきます。

メンバーにはテナーサックスのジョンコルトレーン、アルトサックスにキャノンボールアダレイ、ベースにポールチェンバース、ドラムにジミーコブ。そしてピアノには紆余曲折を経て当時無名だったビルエバンスがメインで採用されています(Freddie Freeloader のみ ウィントンケリー)。

重要な役割を果たしたビルエバンス

当時から抱えていたドラッグ癖や、白人であることへのジャズシーンでの逆差別など、円滑なバンド運営に支障があるという理由から一時ビルエバンスは解雇されますが、クラシックの素養や洗練された透明感のあるエバンスのプレイがマイルスのコンセプトには絶対に必要でした。再度招かれた後、『Blue in Green』『Flamenco Sketches』の作曲に関わり、本作の完成に大きく寄与しました。

ビルエバンスのピアノに支えられた本作は、見事なまでのブルーなサウンドスケープを描き、聴く者をブルーな色彩空間へ誘ってくれます。この後エバンスは名盤『Portrait in Jazz』を生み出し、躍進します。

何よりも、ブルーに酔う悦びを。

始まりは祈りにも似た意味で奏でられて来たブルース。そんなジャズやブルースの霊性や美しさを表現しているかの様に、この後マイルスデイビスのトランペットのトーンは更に美しさを増していき、数々の名演を生み出し続けます。

あまりにも有名で、今でも売れ続けているからこそ、様々な角度で語られる本作。音楽史上も重要なターニングポイントでもあり、アカデミックな視点での聴き方も楽しいのですが、やはりこのアルバムの1番の魅力は、この圧倒的に美しい静寂の上に描かれたブルーなのだと思います。

『何となくブルーな感じ(Kind of Blue)』と名付けられたタイトル通り、何となく素敵なブルーに染まりたい、そんな夜に聴いてみて下さい。気に入って頂けたら幸いです。

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kind of blue miles davis Art Work
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