【Jazz Vocal】It Might As Well Be Swing / Frank Sinatra Count Basie and His Orchestra(1964)

スポンサーリンク

恋はスウィングが如く。

取るに足らないこと。でもそれこそが人生の全て。

シナトラのキュートなスウィングが魅力のビッグバンド作品

世界中に様々な音楽があって、星の数ほど愛の歌はあれど、この作品ほど恋とはこういうものだ、と思える演奏は無いのではないでしょうか。恋をして、浮かれて、ときめいて、落ち込んで、悲しんで、それでもやっぱり恋をして。

人生において、取るに足らないことの様で、人生の全ての様な誰もが抱える恋という難題を、ひとときキュートかつドラマチックなものにしてくれるこのアルバム『It Might As Well Be Swing / Frank Sinatra Count Basie and His Orchestra(1964)』をご紹介します。

スポンサーリンク

『Fly me to the Moon』の最適解

『それって、あのさ、つまりね…』男はいつもモジモジする。

一曲目に収録されているのはあまりにも有名なこの曲、『Fly me to the Moon (In Other Words)』。様々なアーティストに演奏されているこの名曲から本作はスタートします。

色んなロマンチックな台詞を並べた後、『In Other Words, I love you.(言い換えるとね、愛してるってことさ)』という歌詞通り、なかなかストレートに愛してると言えないモジモジ感が、カウントベイシーオーケストラのスウィングとシナトラのクルーナー・ヴァイスにより軽快に表現されています。

様々なアーティストにより演奏されているこの曲ですが、このシナトラのバージョンが『Fly me to the Moon』の最適解かの様に、恋に堕ちた時の愚かにもみえる人の有り様をドラマチックかつ素敵なものに変えてくれます。

他にも『何よりも願うのは、雪の舞う頃、君が愛と共にあること。』と別れた恋人の幸せを祈る名曲『I Wish You Love』やトニーベネットの名曲『The Good Life』など悲しい別れでも相手を想うこころを歌うシナトラ。

辛い別れも人生の彩りである、と言わんばかりにドラマチックに、でも軽やかに表現していきます。

人類史上初、月に届いた録音。

『Fly me to the Moon』は1954年にBart Howard(1915年6月1日 – 2004年2月21日)よって作詞作曲されました。当初は『In Other Words』というタイトルで演奏され、曲調も異なったものでしたが、様々な経緯を経て『Fly me to the Moon』として定着していきます。

このアルバムがリリースされた1960年代はアメリカがアポロ計画の真っ只中で、月への憧れが盛り上がっていたころ。それも夢物語ではなく、実際に月に行ける未来を肌で感じていた時代で、熱狂的に受け入れられました。このシナトラの録音はアポロ10号、11号に積まれ、人類初の月面に到達した楽曲となりました。

新しい宇宙時代真っ只中のこの頃。アメリカとソビエト連邦の対立による東西冷戦の緊張が極限まで高まった1962年のキューバ危機を越え未だ緊張の冷めないこの時代に、それでも人生を、世界を楽しもうとするアメリカ文化の力強さも感じる事が出来ます。

シナトラ・ベイシーという魔法

フランクシナトラ(1915年12月12日 – 1998年5月14日)は、20世紀を代表する、シンガーを超えたエンターティナーです。甘いマスクと歌声で様々な浮名を流しながらも、数々のゴールドディスク、名演を残しています。音楽の他にも出演映画も多数あり、『雨に唄えば』のジーンケリーとの共演など、ミュージカル映画も含めて良作が目白押しです。シナトラはビッグバンドのシンガーとしてキャリアをスタートしスターダムを登り詰めたのですが、憧れのバンドで歌う喜びに満ち溢れています。

カウントベイシー(1904年8月21日 – 1984年4月26日)はジャズピアノ奏者で、ビッグバンドリーダーとしてデュークエリントン、ベニーグッドマンらと共に1940年代スウィングジャズの黄金時代を築いた、ジャズ界の巨人のひとりです。黄金時代を過ぎたものの、彼ら第一線のアーティストの功労により、アメリカ文化のひとつになったビッグバンドは老若男女に親しまれるものになっていました。

プロによる究極のエンターテインメント

そんなスーパーエンターティナーのふたりが組んで楽しいアルバムにならない訳がないのですが、さらにプロデューサーにはクインシージョーンズが加わります。クインシージョーンズは後にマイケルジャクソンとの共同プロデュースでアルバム売上ギネス記録を打ち立てるなど非凡な才能の持ち主ですが、すでにプロデューサーとして活躍し始めていました。

クインシージョーンズをプロデューサーに迎えた事で、シナトラ・ベイシーの前作『An Historic Musical First(1962)』の堅実な雰囲気から一転、ビッグバンド・ジャズの醍醐味に溢れた作品に仕上がりました。3人のスペシャリストによる、豪華なエンターテイメント作品。それが本作『It Might As Well Be Swing / Frank Sinatra Count Basie and His Orchestra(1964)』なのです。

人生の傍らにスウィングを。

日本でも大ヒットした映画『Swing Girls(2004)』などの影響もあり根強い人気のビッグバンドでのスウィングジャズ。ジャズといえばこのスウィングジャズを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

当時のアメリカでも、世界大恐慌から暗い戦争の時代を超えて、アメリカンカルチャーの重要なピースのひとつとして、音楽ジャンルを超えて今でも愛されています。

スウェーデンの音楽プロデューサー、ラスマス・フェイバーのプロジェクトで日本のアニメソングを本格的なジャズで演奏する『プラチナジャズ』が『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディングテーマとして演奏する『Fly me to the Moon』も、このシナトラのテイクへのリスペクトに満ちていて名演です。

ジャズの原点であるこのエンターテインメントに身を任せて、スウィングの様に恋を、そして人生を全力で楽しみたいものです。気に入っていただけたら幸いです。

スポンサーリンク
it might as well be swing frank sinatra Art Work
最新情報をチェックしよう!