【Jazz】The Fabulous Baker Boys / Original Sound Track (Music by Dave Grusin)(1989)

甘く切ない恋の思い出に。

ジャズで綴られる『恋のゆくえ』

デイヴ・グルーシンが贈る、切ない恋のメロディ

素直になれずに終わってしまう恋や、それぞれの夢のため終わってしまう恋。

永遠に続くとは思っていなくても、ふと終わりを迎える恋のゆくえ。恋に恋する歳を越えても、ある日突然やって来る恋の奇跡と、終わりのあっけなさ。それでも生きていかなければいけない。ひとときでも、心から愛したひとに恥じない様に前を向いて。

そんな誰しもが胸にしまい込んだ甘くもほろ苦い恋の思い出を、映画と共に昇華してくれるジャズ・フュージョンの名盤『The Fabulous Baker Boys Original Sound Track / Music by Dave Grusin (1989)』をご紹介します。

スポンサーリンク

名優ミシェルファイファーの出世作

1989年公開『恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』

なかなかうだつの上がらないピアニストの兄弟『ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』。現状を打破すべく、女性ボーカルを迎えての起死回生を狙います。しかしオーディションを繰り返しても納得のいくシンガーは見つかりません。諦めかけた時、スージーというシンガーと出会います。そしてベイカー兄弟とスージーの運命は大きく動き始め…

恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』は、ミシェルファイファー(スージーダイヤモンド役)、ジェフブリッジス(ジャックベイカー役)、ボーブリッジス(フランクベイカー役)主演の1989年公開のラブロマンス映画です。

天才肌で芸術家気質の弟ジャックと、家族を持ち現実的なビジネスとして音楽に向かう兄フランク。そして、シンガーとして成長していくスージー。だからこそ終わってしまう寂しさと、だからこそ輝けた3人のそれぞれの道。

1980年に女優としてのキャリアをスタートさせながらも、主演女優としての活躍を目指していたミシェルファイファーの出世作となった本作。30歳になったばかりのミシェルの美しさもさることながら、スージーという複雑なキャラクターを見事に演じます。

プロとしてのトレーニングを積んでいたわけではないものの、劇中の歌唱にも挑戦し恋と夢に揺れる美しいシンガー『スージーダイヤモンド』を演じ切ったミシェルはアカデミー主演女優賞ノミネートとゴールデングローブ主演女優賞を受賞しました。

デイブグルーシンはジャズ・フュージョンやコンテンポラリーミュージック、そして映画音楽を代表するピアニストで、編曲家、作曲家、プロデューサーとしても知られており、1968年公開映画『卒業』のサウンドトラックでの受賞から、華々しい受賞歴を持つミュージシャンです。

今回ご紹介しているデイブグルーシンによるサウンドトラックもBillboard Jazz チャート3位、グラミー賞ベスト・サウンドトラック部門とベスト・アレンジメント部門受賞と音楽的にも非常に評価の高い作品となりました。参加ミュージシャンもギタリストのリーリトナーなどジャズ・フュージョンの名だたるプレイヤー達が集結しています。

赤いドレスとグランドピアノの名シーン

Makin’ Whoopee

このアルバムでのミシェルファイファーの歌唱は、『Makin’ Whoopee』と『My Funny Valentine』の2曲。

特に印象的なのは赤いドレス姿のスージーが、ジャックの弾くグランドピアノの上でセクシーに歌い上げる『Makin’ Whoopee』です。

1928年にガスカーン作詞ウォルタードナルドソン作曲で1928年ミュージカル『Whoopee!』のために制作されました。以来ジャズ、ブルース共に愛されているスタンダード曲として、様々なアーティストに演奏、歌唱されています。

Whoopee とは馬鹿騒ぎ、から転じて男女間のセクシーな意味で使われる言葉で、『一時の感情に身を任せても、その内あんなに輝いていた恋は全て退屈な日常になってしまうんだから、若いの、気をつけなよ』という内容の歌です。

色んな見方があるのが映画の面白いところですが、このシーンのスージーは華々しい音楽への道より、ジャックとの退屈でも愛し合って過ごす日々に想いを馳せながら歌っている様に見えます。そして扇情的なパフォーマンスを見てヤレヤレ、と笑うジャック。そしてこの後、ふたりは結ばれます。

まだ始まってもいない恋ながら、最高潮に達するふたりの思いと、すれ違いの予感が少し物悲しくもセクシーなこのテイク。映画音楽ならではの、ストーリーを伴った名演です。

記憶を思い出に変えたい、そんな時に。

恋の痛みをストーリーと共に癒す楽曲群

音楽を志すもの同士の、相手の才能や成功への複雑な思い。夢を追いかけるか、何気ない幸せをとるか、など若い頃誰しもが選択せざるを得ない人生の岐路も繊細に描かれており、現在自分の置かれたシチュエーションでそれぞれ感情移入出来るストーリーテリングが素晴らしいこの映画を、余すところなく甘く切なく彩ってくれる本作『The Fabulous Baker Boys / Original Sound Track (Music by Dave Grusin)(1989)』。

ふと思い出しては痛む心の傷。終わってしまった恋の記憶を美しい思い出に変えたい。そんな時は、あれで良かったのだ、出会えて良かったのだ、と思わせてくれる本作を聴いてみてはいかがでしょうか。気に入って頂ければ幸いです。

スポンサーリンク
The fabulous baker boys SoundTrack Dave Grusin 恋のゆくえ Art Work
最新情報をチェックしよう!