まるで一輪のバラの様に可憐なサウンドで贈るラブソング。
スリリングながらもリラックスして聴けるピアノトリオ。
包容力あるトランスペアレントなサウンド。
『Portrait in Jazz / Bill Evans Trio (1954)』から始まるピアノ、ベース、ドラムのトリオでのインタープレイ。
ジャズの醍醐味を感じられるバンド形態のひとつとして、聴き応えのあるものが多いですが、今回ご紹介する『Some More Love Songs / Marc Copland (2013)』はピアノトリオのインタープレイのスリリングさも持ちながら、ラブソング集としてリラックスして楽しめる作品です。ヨーロッパの3大レーベルのひとつ、ドイツPirouetからのリリースでジャケットデザインも魅力的ですが、期待を裏切らない一輪のバラの様な可憐サウンドが堪能出来ます。
ピアノトリオで奏でる、美しくも奥行きのある立体的なサウンド。
手のひらに広がるサウンドの星空
トリオが三者三様に非常に空間表現に秀でたプレイヤーで、ダイナミクスに溢れたプレイを聴かせてくれます。そういった叙情的な表現もさることながら、コンテンポラリージャズの最前線で活躍しているプレイヤーとして、スタンダード曲をベースに非常にスリリングなインプロヴァイズを展開し、さながら星空の様なきらめきを放っています。
手の中の一輪のバラの様に可憐に、時にサウンドの銀河の様に聴くものを至福に導いてくれる素晴らしい3人をご紹介します。
Marc Copland
リーダーのマークコープランドはアメリカのピアニスト。当初はマークコーエンという名前でサックスをプレイしていましたが、80年代中頃にピアニストに転向。リリカルな演奏と独創的なハーモニーが持ち味で近年日本でも人気が出て来ているピアニストです。
Drew Gress
ベーシストはドリューグレス。コンテンポラリージャズ気鋭のベーシストとしてNYにて活動を続け、名だたるミューシャンからそのベースワークは高く評価されており、様々なアーティストのステージやレコーディングで共演、絶大なる支持を得ています。
Jochen Rueckert
ドラマーはヨッケンリュッカート。ドイツのケルン生まれで、現在はNYを拠点に活動。カート・ローゼンウィンケルやパット・メセニーとの共演でも知られる俊英ドラマーです。
収録曲解説
I Don’t Know Where I Stand
1969年ジョニミッチェルの2作目にしてヒットアルバム『青春の光と影』(Clouds)収録曲。恋に我を忘れてしまう気持ちをジョニらしい独特な表現で綴られている。本作でも恋する気持ちの清々しさに満ちたテイクになっている。
My Funny Valentine
1937年リチャードロジャース作詞ロレンツハート作曲。ミュージカル『ベイブス・イン・アームス』で発表されたジャズスタンダード。マイルスデイビス、ビルエバンスを始め様々なアーティストにプレイされているが、本作のテイクは、スリリングなインタープレイが楽しめるアレンジとなっている。
Eighty One
1965年マイルスデイビス『E.S.P.』収録曲。ロンカーターとマイルスデイビスの共作。ジャケットは当時のマイルスの夫人とのリラックスしたカットになっており、ハービーハンコック(ピアノ)ウェインショーター(サックス)ロンカーター(ベース)トニーウィリアムス(ドラム)の全編リラックスした雰囲気のプレイが楽しめる。
Rainbow’s End
マークコープランド作曲。ラブソングの名曲たちの中にあってひときわ美しいバラード曲で、虹の終わりを追いかける雨上がりの様な、幻想的なテイクになっている。
I’ve Got You under My Skin
コール・ポーター作詞作曲。1936年ミュージカル映画『踊るアメリカ艦隊』の挿入歌として使用され、第9回アカデミー賞歌曲賞ノミネート。抑えられない恋心の喜びを歌った曲で、軽快なサウンドでカバーされる事が多いが、本作ではバラード調にアレンジされ、この曲の新しい側面を見せてくれる。
I Remember You
マークコープランド作曲。本作では2曲がオリジナル曲だが、このテイクは他のスタンダード曲の中にあっても違和感なく楽しめるアレンジながら、ピアノトリオのスリリングなインタープレイが堪能出来る。
When I Fall in Love
ヴィクターヤング作曲エドワードヘイマン作詞。1952年公開映画『零号作戦』で初めて使用された。ドリスデイやナットキングコールの歌唱で親しまれるジャズスタンダード。恋のはじまりに、踏み出せずに迷いながらも前に進もうとする気持ちを歌ったこの曲を、本作ではラストナンバーに相応しく繊細なダイナミクスで表現されている。