『世界で最も美しい』トランペッター、クリス・ボッティと超豪華ゲストアーティストの競演
ポップスとジャズの境界線を軽々と飛び越え昇華させる、現代ジャズ界の貴公子
音楽ファンにとっても、時に難解で、非常に芸術性の高いジャンルでもあるジャズ。しかしながら高い芸術性とテクニック、エンターテインメント性というものが渾然一体となり、聴くもの全てに訴えかける、奇跡の様な作品も数多く存在しています。
今回ご紹介する『Chris Botti in Boston / Chris Botti (2009)』は、クリス・ボッティの卓越したテクニックもさることながら、『世界で最も美しい50人』に選出された彼のルックスと詩情溢れるトーン、抜かりのない選曲とそれを完璧に表現する圧倒的実力を持った豪華なゲストアーティスト達による、高い芸術性とエンターテインメント性を兼ね備えた類稀な作品です。
ボストンポップスオーケストラをバックに、クラシック歌曲も歌いこなすジョシュ・グローバンから、チェリスト ヨーヨー・マ、ロックシンガーのジョン・メイヤー や エアロスミス の スティーヴン・タイラーなど、想像を遥かに超える幅の広いジャンルから同一のステージでの共演を実現しています。
多様性を育んだセッションプレイヤーとしてのキャリア
クリス・ボッティ (Chris Botti 1962年10月6日生まれ) は、ピアニストだった母親の影響で早くから音楽に興味を持ち、9歳でトランペットを始めます。12歳の時に出会ったマイルス・デイヴィスの『My Funny Valentine』により、トランペットにのめり込んで行くことになります。
1981年ファーストフードチェーン大手マクドナルドが協賛する、McDonald’s All American High School Jazz bandのメンバーとしてカーネギーホールでのコンサートを行うなどトランペットの道を邁進するクリス・ボッティは、高校卒業後もインディアナ大学で音楽を学びながら活動を続けました。
フランク・シナトラとバディ・リッチのツアーに参加するため大学を中退したのち、1985年にはニューヨークに拠点を移し、セッションプレイヤーとして多様な音楽の中で自身のトーンを磨いていき、実力を認められる様になっていきます。
グラミー受賞、そしてソロキャリアへ
1990年よりポール・サイモンのサポートを始めたクリス・ボッティ。1991年ポール・サイモン『Rhythm of the Saints』ツアー帯同中に、サックス奏者マイケル・ブレッカーと出会い、The Brecker Brothers『Evocations』を共同制作します。
1995年にグラミー賞最優秀コンテンポラリージャズパフォーマンスを受賞。ソロアーティストとしてのデビューに漕ぎ着けます。
ターニングポイントとなった Sting 『…All this time』
ソロアーティストとして活動する傍ら、ジャズフュージョン系の実験的なプロジェクトBruford Levin Upper Extremitiesなどにも積極的に取り組み、独自のサウンドを築き上げていくなか、1999年 Sting のアルバム、 『Brand New Day 』に参加します。
ロックバンド『The Police』で大成功を収め、ソロアーティストとしても確固とした地位を築いていた Sting の Brand New Day プロジェクトは各界から実力派のアーティストが集められ、その一員としてロックやポップ、ジャズの見事なクロスオーバーを果たします。
Sting 『Brand New Day』ツアーから、2001年9.11アメリカ同時多発テロ当日に Sting のイタリアの別荘で行われた『… All this time』は、様々なジャンルの音楽を繋げるものとして、ジャズの存在価値を更に高めると同時に、クリス・ボッティのキャリアの中でも特筆すべきターニングポイントとなりました。本作でも、Stingとの共演が実現しています。
以降もジャンルを超えて素晴らしい作品を作り続けているクリス・ボッティ。
ここまでの彼のキャリアの集大成とも言える本作は、楽曲のチョイスも、一般的に親しみのある楽曲やジャズのスタンダード曲などからなされており、一流アーティストによる楽曲表現の妙がより感じられる内容となっています。
親しみのある曲や知っているアーティストとの共演曲などから、広がっていく幅広いクリス・ボッティの世界をお楽しみください。気に入っていただけたら幸いです。
『Chris Botti in Boston』収録曲、共演リスト
- Ave Maria – Chris Botti
- When I Fall In Love – Chris Botti
- Seven Days – Chris Botti feat. Sting and Dominic Miller
- Emmanuel – Chris Botti feat. Lucia Micarelli
- I’ve Got You Under My Skin – Chris Botti feat. Katharine McPhee
- Cinema Paradiso – Chris Botti feat. Yo-Yo Ma
- Broken Vow – Chris Botti feat. Josh Groban
- Flamenco Sketches – Chris Botti
- Glad to Be Unhappy – Chris Botti feat. John Mayer
- Hallelujah – Chris Botti
- Smile – Chris Botti feat. Steven Tyler
- If I Ever Lose My Faith In You – Chris Botti feat. Sting and Dominic Miller
- Time to Say Good Bye (Con Te Partiro) – Chris Botti