透き通る秋空に映えるエバンスの『Autmun Leaves』
その前に。『枯葉』と言えばキャノンボール。
ジャズスタンダードの名曲と言えば、よく『枯葉(Autumn Leaves)』が挙げられます。
そこで紹介されるのが、Cannonball Adderley 『Somethin’ Else (1958)』だったりするのですが、ここに収録されているのは、ゆったり味わいのある枯葉です。
アルトサックス奏者キャノンボールアダレイのリーダー作名義になっているのですが、実際はマイルスデイビス(tp)がリーダーとなって制作された様です。
Les Feuilles mortes から Autumn Leaves へ
『枯葉』は、1945年 Joseph Kosmaにより作曲。後にJacques Prévertによってフランス語の歌詞がつけられ、シャンソンのスタンダード『Les Feuilles mortes』として親しまれていた曲で、肌寒い秋のはじまりに別れた恋人を思う楽曲です。
1950年に Johnny Mercer によって英語詞がつけられ、ビング・クロスビーやナット・キング・コールなどがレコーディングしています。そして1955年のロジャーウィリアムスのピアノインストの大ヒットによって広く知られる様になりました。
そんな枯葉を、ジャズの世界に持ち込んだこのアルバムは、それまでのシャンソン特有のドラマチックなものから、しみじみと味わいのあるものに変えて録音されました。
より刹那的な枯葉ならエバンスの枯葉
もう会えない人を思い、ソファでブランケットに包まり、ホットココアを飲みながら窓の外に舞う枯葉を眺めているかの様な切なさを感じるこのテイク。
しかしながら、タイトルから感じられる様な、澄み渡る秋空と身を切る木枯の中歩く刹那的なイメージを求めて聴くなら、今回ご紹介する『Portrait in Jazz / Bill Evans Trio (1959)』がぴったりです。
よりスリリングでスタイリッシュな Autumn Leaves
目の覚める様なピアノのオープニングから始まるエバンスのAutumn Leaves。ベースが一拍目から休符で入るフックの効いたオープニングから始まるこのテイクは、正に恋人を失った切なさと、枯葉舞う秋空のイメージにピッタリで、寒い日に外で聴くとまるで恋愛映画の主人公になった様な、カタルシス溢れる名演です。
インタープレイ。小編成バンドの息を飲むフレーズの応酬
このアルバムはピアノにリーダーのビルエバンス、ベースに若手のスコットラファロ、ドラムにポールモチアンというトリオ編成でのレコーディングされました。3人という最低限の編成で、通常ではリズムを担当するベースもアドリブでのソロを取り、ピアノとの掛け合いを行うこのインタープレイと名づけられた形態は、後のジャズセッションの定番となって行きます。
アルバムを通して緊張感溢れる3人のプレイが堪能出来るところが、このアルバム『Portrait in Jazz / Bill Evans Trio (1959)』の最大の魅力です。
この他にも、ディズニーの白雪姫のテーマ『Someday My Prince Will Come』や、人気のスタンダード曲『When I Fall in Love』、マイルスデイビスとの共作の美しいバラード曲『Blue in Green』など名演揃いで、非常に聴き応えのある名盤です。
この後もこのトリオで活動を続け好評を得るのですが、ベーシストであるスコットラファロの突然の急死により、エバンスは活動を休止。悲しみからドラッグで身体を蝕み復活まで長い期間を要します。復活後もこのAutumn Leavesは、研ぎ澄まされつつも、この独特のフックのあるテーマで演奏され続けました。
I Miss You Most of All.
英詞の中で歌われる『とにかく君が恋しい。』という歌詞が、この曲の切なさをより一層引き立てますが、エバンスもそんな気持ちでプレイし続けたのかもしれません。曲にストーリーがある様に、アーティストにもストーリーがあり、そういった背景に思いを馳せるのもジャズの魅力のひとつかもしれません。
もう会うことのない大切な誰かを思いながら、少しだけこの曲に身を任せてみてはいかがでしょうか。
この『Autumn Leaves』というスタンダード曲は、現在でも最も頻繁にプレイされる曲のひとつで、名演を生み続けています。最後にイギリスのアーティスト、Kitty La Roar のプレイする2013年の名演をご紹介したいと思います。どちらも気に入って頂ければ幸いです。