気鋭のアーティストが集結した珠玉のディズニージャズ
誰もが楽しめる、みんなが楽しめる最上のジャズを。
最高の音楽を作り続けるディズニーのメロディ
Disney と Jazz は古くから非常に親和性が高く、数々のディズニー作品の楽曲がスタンダード曲として演奏されて来ました。
Jazz という、場合によっては非常に難解にもなりがちな演奏形態を、『誰もが口ずさめる』ほどポピュラーなディズニー楽曲などで表現することで、ジャズは広く愛される様になったと言っても過言ではありません。
ディズニー楽曲とジャズのコンピレーションアルバムは数多くリリースされていますが、今回ご紹介する『Everybody Wants To Be A Cat (2011)』は、気鋭のアーティストたちが集結して製作されており、聴き応えがあり完成度も非常に高い作品となっています。
ここでは、何曲か抜粋してオリジナルと共に、注目のトラックとアーティストをご紹介して行きます。
ディズニーの名曲の新たな魅力を引き出す名演と名手たち
Track 1 – Everybody Wants To Be A Cat / Roy Hargrove
タイトル曲『Ev’rybody Wants To Be A Cat』は、1970年公開の『おしゃれキャット』の劇中歌です。
『みんなネコになりたいのさ』とネコたちが歌うこの曲は、劇中でもネコたちがジャズを演奏しながら歌い踊る楽曲で、ジャズの洒脱な雰囲気と相まって見応えのあるシーンです。
正統派トランペッターにして革新的アーティスト、ロイ・ハーグローブ
本作のオープニングを飾るアーティストの Roy Hargrove はアメリカのトランペッターで、RH FactorとしてジャズとR&B、Hip Hopを繋ぐパイオニアとしても活躍しました。伸びやかでクールなアレンジと正統派なプレイが楽曲の魅力を存分に引き出しています。
惜しくも2018年に48歳の若さで亡くなりましたが、ジャズのみならずR&Bの世界でもエリカバドゥなど様々なアーティストと共演し、ネオ・ソウルムーブメントを起こした才能溢れるトランペット奏者でした。
Track 2 – Chim Chim Cher-ee / Esperanza Spalding
『チム・チム・チェリー』は1964年公開のミュージカル映画『メリーポピンズ』の劇中歌。
不思議なお手伝いさん、バリーと子供たちがメリー・ポピンズと共に煙突に吸い込まれて、屋上で美しいロンドンの夕焼けを眺めるシーンで歌われるこの曲。煙突掃除をモチーフに少し悲しげなメロディラインですが、明るい歌声で楽しい楽曲です。
ベーシスト&シンガーにしてマルチプレイヤー、エスペランサ・スポルティング
Esperanza Spalding は、幼少期よりヴァイオリンやチェロ、ギター、オーボエやクラリネットなど多岐に渡る楽器を演奏し、ベースに専念する様になってから才能を発揮。バークリー音楽大学を飛び級で卒業してからは一時当大学で教鞭を取っていたという才能溢れるシンガーでありベーシスト。
多くのアーティストとも共演を果たしており、実力を認められたプレイヤーで2011年にはグラミー最優秀新人賞、と2013年にはグラミー最優秀ジャズボーカルアルバム賞を受賞しています。
Track 7 – Feed The Birds (Tuppence A Bag) / Kurt Rosenwinkel
『2ペンスを鳩に』は同じくメリーポピンズから。ジュリー・アンドリュース扮するメリーポピンズが寺院で鳩の餌袋を売っている貧しい老婆の物語を語る様に歌う優しいメロディの曲です。
コンテンポラリージャズ界の帝王、ギタリスト カート・ローゼンウィンケル
Kurt Rosenwinkel はコンテンポラリージャズのギタリストとして、様々なセッションにも参加し自身のリーダー作も数多くリリースしており、ジャズ界の帝王と呼ばれています。そして多くの後進ギタリストに多大な影響を与え続けているアーティストです。
このテイクで聴かれる独特の浮遊感溢れるプレイが、語りかける様にメロディを彩っていきます。過去の彼のアルバムでも、同じく透明感と浮遊感に溢れたギターを聴くことが出来ます。
Track 12 – Bell / Gilad Hekselman
『Bell』は1991年公開の『美女と野獣』の劇中歌。2017年公開のエマ・ワトソン主演の実写版でもベルの快活なイメージを象徴的に歌い上げるシーンが印象的でした。
ジャズギターの次世代の代表的ギタリスト、ギラッド・ヘクセルマン
Gilad Hekselman は今や次世代ジャズギター界の旗手として注目を集めているギタリストです。
2005年の Gibson Montreux International Guitar Competition で優勝後、精力的に活動。エフェクターなど機材を駆使する新しいスタイルを模索しながらも、本テイクの様な正統派の表現も素晴らしいギタリストです。加えてソングライティングでも評価が高く、現在のジャズシーンの中心人物となっています。
デイブ・ブルーベック最後のスタジオテイク
2012年に91歳でこの世を去ったジャズジャイアント、ピアニスト Dave Brubeck の最後のスタジオテイクでもある本作。『Someday Will Prince Come(1937年『白雪姫』)』『Alice in Wonderland(1951年『不思議の国のアリス』)』の2曲で参加しています。どちらもキャリアの最後に相応しい、素晴らしいテイクです。
彼は、1957年にThe Dave Brubeck Quartet にて『Dave Digs Disney』をリリースしています。ポールデズモンドのアルトサックスと軽快なピアノが心地良く、ディズニー・ジャズコンピレーションの先駆けとなった作品です。
これからも生まれ続ける名作、名演
またまだこれからもずっと名作、名曲を生み出して行くであろうディズニー。その度にまた新たな名演が生み出されていくでしょう。
ジャズスタンダードとして親しまれているディズニーの名曲はまだまだたくさんあり、名演もたくさんあります。
ディズニーという素晴らしい扉を通して、ジャズがより皆さんの身近なものになりましたら幸いです。